自動車のフロント補修用ガラスに活きる職人技

~1年に1%という"取り替え需要"に丁寧に対応~

日本特殊硝子 株式会社

取締役社長

菊地 辰夫氏

住所 海津市平田町幡長401
TEL 0584-67-3888
FAX 0584-67-3219
URL https://www.nittoku-glass.co.jp/
事業内容 合わせガラス及び強化ガラスの製造・販売
従業員数 126人(2019年3月31日現在)

フロントガラスが破損した時の“頼みの綱”=補修用ガラス

聞き手:まずは御社の事業内容からお聞かせください。

菊地社長:自動車のフロントガラス、それも新車用ではなく、補修用の合わせガラスを製造・販売しています。生産・販売が終了したような自動車への需要もあり、中には古いカスタムメイドの車に関する問合せが来ることもあります。
 そうなるとオーダーメイドということになりますが、1枚からでも手作りしてぴたりと合わせるようにしています。そこが他社とは異なるところでしょうか。むしろ自社の強みだとも思っています。

聞き手:自動車への合わせガラスの採用は、30年くらい前に法制化されたのですよね。

菊地社長:薄い硝子が2枚合わせてありますから、飛び石等があると破損してしまいます。昔の強化ガラスのように、くもの巣状にひび割れが広がるようなことはありませんが、樹脂等での補修が難しい場合には補修用ガラスの出番となります。
 日本の自動車は1年間に1%くらいの取り替え需要があると言われていて、それに対して受注生産を行っています。ガラスを金型に当てて窯に入れ、熱して成型するのですが、フロントの形や湾曲具合も車種ごとに異なりますので、倉庫にはこれまでに生産したことがある様々な車種用の金型がたくさん眠っています。多種多様な自動車に対応できるのも当社の強みですから、なかなか捨てられないですね。
 フロント以外では、リヤーやサイドウインドのガラスについても問合せや注文があれば対応します。それから、住宅用の断熱や防犯といった効果のある複層用合わせガラスも一部生産しています。

スタートは愛知県の西春町

聞き手:御社の歴史についてもお聞かせください。

菊地社長:創業は1961年(昭和36年)で、当初は愛知県春日井郡西春町に工場を構えていました。当時は強化ガラスが主体でしたが、1967年には合わせガラスの工場もでき、その生産が主体になっていきました。その後もとの工場も手狭になり、1991年に西春町から現在の海津市平田町へと移転しています。
 現在は親会社がセントラル硝子㈱ですので、私はそこからの出向で、昨年7月に就任しました。昨年というと、空港が水没するという関西での大きな台風被害が記憶に新しいですが、この時はたくさんの自動車にも被害があり、自動車の販売店を通じて問合せが殺到しました。必要とされれば極力対応したい、といことで、2、3ヵ月はとても大変でした。

聞き手:あの時は自動車のボディーへの損傷も多く、私たち販売店でも板金塗装の相談がかなりありました。
 ところで、今のフロントガラスはUVカットや色合いなど、様々な加工が施されていますね。

菊地社長:そうですね。紫外線や赤外線をカットするものが主流です。紫外線をある程度カットしてくれるソーラーガラスが多いため、色合いではグリーンがかったものが多いかと思います。ただフロントガラスは可視光透過率が70%以上と決まっていますので、リヤーウインド等のように黒いガラスを使用することはありませんね。

繊細なガラスの扱いを心得た「職人」集団マイスター制度で技術を伝承

聞き手:フロントガラスは1枚ずつ手作りというお話でしたが、「職人」といった方が多いのですか?

菊地社長:長年やってきて、他の人ではなかなか真似できない技術を持っているような方が多いですね。そのような固有の技術はマイスターとして、この人からこの人へ伝承するというように取り組みを始めています。資格というよりはノウハウの伝授ですね。現場の人に言わせると、ガラスの持ち方一つでも出来が変わるそうです。天候や温度湿度ももちろん関わります。

聞き手:人材育成についてはいかがでしょうか。

菊地社長:今期から報奨や表彰の制度を考えたいと思っています。すでに各部署で重要な技術をペアリングしてもらいましたので、さらにその取り組みを後押しできるような態勢にしていきたいです。今はまだしっかりとした制度がありませんので、ノウハウを持った方が長く勤められる職場になるようにと考えています。
 もともと改善制度はあり、セントラル硝子㈱の表彰制度もありますので、コスト削減効果などが大きい案件についてはまず社内で審査し、推薦したりもしています。

聞き手:労働者自身が自分で改善していく制度は日本の強みだなと思います。モチベーションアップにもつながりますよね。そのほかはいかがでしょう。

菊地社長:人間関係を保つためにはコミュニケーションスキルが必須ですから、そういった力を養成していくことも目的として掲げています。
 新入社員についても、最初から技能が必要なわけではありませんから、長く勤める中でいろいろ学び、ゆくゆくは機械保全技能士などの国家資格を目指してもらえればと思います。

高機能ガラスの海外供給も視野に

聞き手:今後の展開についてもお聞かせください。

菊地社長:日本の人口は少し減少傾向で、自動車の保有台数は横ばいの状態です。ですから需要はそれなりにありますが、一方でガラスの補修技術が向上したり、衝突回避等の支援システムも当たり前に搭載されるようになってきました。安全性が高まれば破損も減りますから、それは良いことなのですが、補修ガラスの需要としては減っていく可能性もあるわけです。
 そこで、例えば安全運転支援システムが内蔵された自動車については、様々な部品がガラスに付随するため、現在は取り替えるにも純正のガラスのみが使用されていますが、それらの補修需要も取り込んでいけるよう、当社でも調査や検証を進めているところです。
 また、曇り止めを目的とした熱線を組み込んだガラスも国内外の寒冷地で需要がありますから、こういった特殊ガラスの供給にも力を入れていきたいところです。
 4月末には、現在地に移転して30年ぶりに、工場の敷地を拡張し、工場全体のレイアウト変更も行っていきます。元号も改まりましたし、気分も新たにいろいろと取り組んでいきたいですね。

聞き手:本日は貴重なお話をありがとうございました。

聞き手

(一社)岐阜県経営者協会 広報部会委員
岐阜トヨタ自動車㈱

人事部 次長野々村 勤 氏